昨日は「助けて!」と言うことについて考えてみました。
今日は最終回。傾聴の難しさについて支える側から考えてみたいと思います。
そして最後に、いくつか注意すべきことも整理したいと思います。
4) 傾聴の難しさ
先日にご紹介した友人やアントニオ猪木さんは傾聴のプロだと思います。
私もまねて傾聴することがあります。
けれども相手によっては上手くいかない場合があります。
私を支えてくれた友人が、私の話に「それは大変だな」「それは辛いな」とだけ相槌を打ってくれて、一切のアドバイスをしないのに上手くいったのは、私の持って生まれた性格がポジティブ志向だったからだと思います。
しかし、ネガティブ志向の人の場合、一人でしゃべっていると、悪い方へ悪い方へと傾いてしまうことがよくあります。このような場合は、やはり適度にアドバイスして軌道修正を促すほうが良いのかなと思っています。
ただし、その人が何をするべきかではなく、ポジティブな方向を向くべきとのアドバイスであり、何をするかは自分で考えてもらうべきとも思います。
同じようなことは1対1の傾聴だけでなく、グループの中でもありそうです。
グループ内で相談したところ、無責任な一人が「〇〇しちゃいなよ!」と安易で悪い方に誘導してしまうことはよく起こります。
そうなったら上手く止めにかからないと、破滅的な方向に向かうかもしれません。
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5) 注意すべき点と心構え
注意すべき点があるからと言って、支え合いを躊躇してはいけませんが、やはりハッピーエンドになるためには注意が必要です。
災害現場でも、人生のいろいろな困難な局面でも、共通です。
- 支援される側は頼り切らない、依存しない
支援される側は支援する側に頼り切っては駄目です。自分のことですから、まずは自分で出来る範囲で頑張る気持ちでいないと。
頼り切ったり依存したりすると、支援する側は重荷に感じて離れてしまいます。
がんばる気持ちになれない時は、誰かにそれを話して、心を安らげましょう。 - 支援する側も依存しない
支援する側も一生懸命になり過ぎて、依存してしまうことが往々にしてあります。
程よく自分の存在価値や生きがいを支援活動に感じることは、自然なことですし悪いことではありません。ただ、それが強くなり過ぎると支障が出てきます。それを共依存と言います。言葉は悪いですが、正義のヒーローのような気持ちになって、自分に酔ってしまうこともあります。
共感や思い入れ、同情などでのめり込んでしまうと、本来の目的である、その人の困難の解決に近づかないことがあります。極端な例では、支援している自分が心地よいのですから、その状態が続くように(その人の問題が解決しないように)動いてしまうこともあります。
また、「自分はこんなに一生懸命に助けているのに、なんで分からないんだ!」と変な軋轢に発展して、支援される方を困らせてしまうことがあります。
その他にも、これは人によりますが、無理して自分の生活や人生を犠牲にしては続かないと思います。
距離感を保つことが大切です。 - 支援する側は自分の意見を押し付けない
人の考え方も性格も十人十色です。
自分にとって最善と思えることでも、相手には気乗りしない内容かもしれません。
そもそも「ああするほうが良い」「こうするべきだ」と、どうするかアドバイスするのは、あまり良い方法とは思えません(必要な時もありますが)。
どうするかは、その人が自分で考え、自分で選択すべきだと思います。人に押し付けられて嫌々やるのでは、上手くいかないことが多いことでしょう。
支援する人がやるべきことは、その人が前向きに考える気持ちを持てるように寄り添ってあげることと、その人が考えて選択するのに必要な情報を偏りなく提供することだと考えます。 - 異性関係に注意
異性の相手と相談して一緒に一つの目標に向かって悩んだりすると、恋愛感情と錯覚することがあります(LGBTQの方は同性でも可能性があります)。
どちらかが恋愛感情を持ってしまうと、問題の解決にならないばかりか、関係がこじれることもあります。
あくまでも「仲間」「同志」の立場を貫かないと新たな問題を生みます。とにかく、まずは元々の問題を解決することが最優先です。
また、双方ともにそんな感情は持っていなくても、周囲の第三者が勝手に誤解する場合もあります。特に解決しようとしている問題がいわゆる異性関係の場合は、相談相手が異性だと、より問題がこじれ複雑になってしまいがちで注意が必要です。 - 秘密は守る
難しくナイーブな問題を扱うので、双方が秘密を守ることは基本です。
支援される側も「〇〇さんが助けてくれている」と安易に話さないほうが良いです。
しかし、関わる人の範囲を広げる必要がある場合も多いです。弁護士さんなど守秘義務を心得ている方なら安心ですが、一般の方の場合は慎重にする必要があります。
AさんのことをBさんに話す必要がある時は、先にAさんの了解を得るようにしましょう。
この他にもいろいろあるかもしれません。けれども、注意すべき点があるからと言って支え合いを躊躇せずにハッピーエンドを目指しましょう!
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五日間にわたり、自分のお恥ずかしい経験を披露させて頂きましたが、人生で三度、地獄のような経験をして良かったなとも思っています。
一つ目には、危機を乗り越え、自分に絶対的な信頼を持てるようになりました。いわゆる「自信」とはちょっと違う気がします。自分なら何とかやってゆけるという自分に対する「信頼」です。
二つ目には、人の心の温かさを知ることが出来たことです。
三つ目には「生きてゆくには強くなければいけない。でも一人ではやっぱりどうしようもない部分もある。ヒトは一人では生きていけない・・」と身に沁みたことです。そして、それが私の「支え合い」の心の原点となりました。
これからも、救ってもらった多くの恩を少しでも世の中に返せるように、微力でも努めてゆきたいと思っています。
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