≪住民編≫ に引き続き、自治会・町内会としての教訓を整理しました。
1.災害直後、自治会の特に重要な役割は二つ!
それは被害の把握と住民への呼び掛けです。
1) 災害直後の役割①:初期の被害状況把握
いうまでもなく、迅速で的確な救出・救援のためには、被害状況の早急な把握が最優先事項です。
しかし、現実には激甚災害の度に、初期の被害情報収集に課題がみられます。
■実状①:災害直後の被害情報はなかなか集まらない
この画像のように、27時間後(1月2日19時)でも断片的な被害情報しか把握できていません。
今回の災害で最も深刻な被害は能登半島北部~中部での倒壊家屋の下敷きですが、27時間経ってもその情報が少なく、何を重点に、どこを重点に救助すればよいのか分かりません。
最も被害の深刻な能登半島の情報は少なく、遠隔地の比較的軽微な情報のほうが速く伝わります。
阪神・淡路大震災や東日本大震災でも、初期には一番被害が深刻な地域の情報が入らない空白地域となり、比較的被害が軽い周辺部の情報から伝わるドーナツ現象が繰り返されてきました。
■実状②:被害情報が集まったとしても定性的な情報になりがち
激甚災害時は交通も寸断されるうえに行政も被災して被害調査が困難なため、庁舎周辺の定性的な情報 (「倒壊した家がある」「ブロック塀が倒れた」など)が中心になりがちです。
一方、地方行政や政府が効果的に救出・救援計画を立てるためには、どの程度深刻な被害がどの程度あるかの量的な情報(例えば「○○地域では倒壊・崩壊した家屋が世帯数の○%位ある」といった情報:「定量的情報」と呼んでいます)が重要です。
■自治会・町内会に求められること:概略の被害調査と報告
マンパワーが不足し交通も寸断する中で、行政による域内各地の被害調査はかなり困難です。
このため、行政が各地に調査に出向くまでもなく、現場に居る自治会による調査・報告があれば、かなり有益な情報となります。
特に、定量的情報(「人口○○人の地区で倒壊・崩壊棟数が約○棟」など)を通報出来れば、迅速かつ的確な救援の呼び込みに繋がります。
国では、震度情報から深刻度を想定し、被害状況が不明のうちから救援部隊の動員と物資輸送を行うプッシュ支援が行われるようになってきましたが、ローカルな事情(今回の能登半島地震では耐震性の低い家屋が地域に多いなど)で被害の形態や深刻度も異なるため、やはり被害情報の速やかな発信が必要です。
■自治会・町内会による被害調査のやり方
自治会はもともと現場に居るという強みがありますが、自治会とて十分な人数の動員は期待できず、また災害直後の混乱の中では収集できる情報も限られます。
・まずは「倒壊・崩壊の家屋数」の把握を
被災直後は住民がどこに居るか分かりません。外出中で出先で無事かもしれません。倒壊家屋の下に人が居るのか居ないのかも、なかなか分かりません。
死者数、行方不明者数、重傷者数、軽傷者数など人的被害の把握は、災害直後には、ほぼ無理です。
このため、初動では目視で分かる「倒壊・崩壊の家屋数」の把握が合理的です。
まずは正確さよりスピードが重要です。
ざっくりの倒壊・崩壊家屋の割合が分かれば、国や地方自治体は人的被害や避難者数、必要となる仮設住宅数等を精度が低くても早期に推定し、初期の救援活動に反映させることが出来ます。
なお、倒壊・崩壊家屋数の把握にドローンを使えるとより効果的かもしれません。
※平時の訓練が大切
自治会が被害把握をするといっても、なかなか出来ないと思います。
自治会が通常行っている訓練は、避難所等に行く避難訓練や、避難所での設営訓練のみの自治会が殆どではないでしょうか?
しかし、実際には災害時に自治会が行うべき役割は多岐にわたります(詳しくはこちら)。避難所開設は、その一部にしかすぎません。
おそらく初動での被害調査を訓練している自治会は、ごく一握りと思われます。
安否確認と集計の訓練をしている自治会もあるかもしれませんが、班長・組長 ⇒ 地区長 ⇒ 自治会災害対策本部 という情報集約方法は、激甚災害の発生直後の混乱の中では、現実的には、ほぼ機能しないと思ってください。
では、実際に何をどうやって調査するのか? あらかじめ、調査方法を決め、必要な備品を揃え、そして訓練しないと、まず災害時には何も出来ません。
彩防災企画では自治会の初動訓練を指導してきた実績があります。是非、ご相談ください。
令和6年(2024年)能登半島地震からの教訓
(その1)「災害直後の自治会の役割①:被害の把握」へ
(その2)「災害直後の自治会の役割②:住民への呼び掛け」へ
(その3)「災害直後の自治会の役割③:情報発信」へ
「能登半島地震からの教訓:住民編」へ
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